外観検査は長時間続けられる?疲労と集中力の限界
工場での外観検査は、しばしば一日中続く作業です。人間は同じ姿勢で製品を見続けると、どうしても集中力が落ちてきます。短い時間では正確に見分けられていた欠陥も、時間が経つにつれて見逃しや誤判定が増えることが知られています。
心理学や人間工学の研究では、検査や監視のような単調な作業を続けると「注意の持続時間」が限界を迎え、正答率が下がることが繰り返し確認されています。航空整備や空港の手荷物検査を対象とした実験でも、検査開始から時間が経過するにつれ、欠陥や危険物の見逃しが有意に増えるというデータが報告されています。外観検査の現場でも同じことが起こっていると考えてよいでしょう。
さらに、疲労によって視覚そのものも影響を受けます。焦点が合いにくくなったり、微細なコントラストを捉える力が落ちたりするため、経験豊富な検査員であっても精度が低下してしまいます。これは個人の努力や教育では完全に解決できない「人間の生理的な限界」です。
AIによる外観検査は、この問題に対して明確な解決策を示します。機械は疲労しないため、朝と夜で判定精度に差が生じません。長時間にわたって同じ基準で安定して判定を続けられることは、生産ライン全体の信頼性を大きく高める要因になります。
外観検査を自動化する目的は単に人手不足を補うことだけではありません。疲労や集中力低下による見逃しを防ぎ、品質の安定を支えることこそ、AI導入の大きな意義だと考えています。