目視検査の役割と課題
IVI-360™の開発にあたっては、ダイカスト製造現場の「現実を踏まえること」と「実現可能なところから実行する」という姿勢を重視しています。私たちの目標は、目視検査を単に自動化で置き換えることではなく、「人間の判断力」と「柔軟性」という本質的な強みを尊重しながら、検査業務の負荷を軽減し、結果として「製品品質の安定化」を図ることです。
農業機械部品や自動車部品など、製造業の現場では、熟練の検査員が経験に基づいて微細な異常を見抜くというプロセスが、今なお重要な役割を担っています。その繊細な判断力は、AIやビジョンシステムだけでは簡単に再現できるものではありません。
特にダイカスト製造においては、金型や条件のわずかな変化によって生産品にある程度のばらつきが生じることが前提となっており、その中で安定した品質を保つためには、検査段階での柔軟な対応力が欠かせません。
もちろん、品質管理の基本は「不良を作らないこと」にあります。すなわち、設計や金型、鋳造条件管理といった源流での対策こそが最も重要です。しかし現実には、コストや納期の制約から、すべてを源流で解決することは困難であり、現場では「流出防止」という検査の役割が今も求められています。
こうした背景を踏まえ、IVI-360™は、「品質管理を担う皆さまを支えるパートナー」として設計されています。ダイカスト外観検査という注意力や集中力が試される過酷な環境の中で、少しでも負荷を軽減し、安定した品質を共に作り上げる存在でありたいと考えています。
目視検査のメリットとデメリット
⭕️ 目視検査のメリット
☺️柔軟な判断力:形状のばらつきや判定基準変更に即時に対応可能。
☺️初期投資が少ない:専用装置が不要で、立ち上げが早い。
☺️経験に基づく高度な判断:長年の経験により、機械では気づかない微妙な異常を発見できる。
☺️多品種少量に強い:製品の切り替えが多い現場でも対応可能。
❌ 目視検査のデメリット
😢検査精度のばらつき:作業者によって基準や感度が異なる。
😢疲労・集中力低下によるミス:長時間作業により、見逃しや誤判定が発生。
😢作業者教育・維持管理が必要:常に基準を保つためには教育とチェックが必要。
😢トレーサビリティに弱い:検査結果の記録が曖昧になりやすい。
目視検査は柔軟で多様な状況に対応できる一方、属人的で疲労や気分の影響などでばらつきやミスのリスクが伴います。現代の製造現場では、目視検査のメリットを活かしつつ、疲労低減のためにAIや機械検査と併用する「ハイブリッド型検査」が主流となりつつあります。