人材が入れ替わる海外工場、教育コストはどこまで続く?
外観検査は、経験を積んだ人ほど精度が高まる仕事です。しかし、検査員が熟練するまでには長い時間と教育コストが必要です。新人は最初のうち欠陥を見逃したり、良品を不良と判定したりします。現場でトレーニングと経験を重ね、ようやく適切に判断できるようになるのです。
日本の工場では比較的人材が定着しやすく、一度育てた検査員が長く働き続けるケースが多い傾向にあります。そのため教育投資がある程度回収されやすい環境があります。
しかし海外、特に新興国の製造現場では、人の入れ替わりが比較的多い傾向があります。せっかく時間をかけて教育した検査員が短期間で退職してしまえば、また一から教育を繰り返さなければなりません。教育コストは積み上がる一方で、現場の安定性も損なわれます。
AIによる外観検査は、この問題を根本的に変えることができます。一度学習させたモデルを修正すれば、複数拠点や複数台の装置に即座に展開できます。例えば10台の検査機を海外工場に設置していた場合、1回のモデル改善で10台すべてに同じ基準を適用できます。人材の定着率に左右されず、基準を全社的・グローバルに統一できるのです。
教育コストの削減と品質の均一化は、海外拠点を多く持つ製造業にとって極めて大きなメリットです。人の流動性が高い地域だからこそ、AIによる検査の自動化が経営的な安定につながります。