経験を全社に広げる?AIによる継続的学習と改善
外観検査において、人の経験は非常に大切です。検査員はトレーニングを受け、実際の不良に触れる経験を重ねることで、ようやく適切に判定できるようになります。しかしその成長は個人ごとに異なり、属人的になりやすいのが現実です。熟練者がどれほど正確に判定できるようになっても、その経験が他の検査員に即座に伝わるわけではありません。
一方でAIは「経験を全社で共有する」仕組みを持つことができます。例えば、工場に外観検査装置を10台導入しているとします。ある欠陥を見逃すような誤判定が起きても、学習モデルを修正すれば10台すべてに即座に適用されます。つまり「一度の改善が全社に広がる」のです。
これは人間の教育やOJTでは到底実現できないスピードと確実性です。AI検査の強みは、単に「目の代わり」になるだけでなく、データを蓄積して学習を繰り返すことで、検査精度を組織全体で底上げできる点にあります。
さらに、AIは改善の過程も記録として残します。どの欠陥で誤判定が多かったのか、どのようにモデルを更新したのかを客観的に追跡できるため、品質保証部門にとっても有益な資産となります。
人は経験を積めば必ず上達しますが、それは時間と個人差に左右されます。AIはその改善を「一度で全社に展開できる」点で、人と補完し合う存在になるのです。