人の目に頼る外観検査は「記録が残らない」
外観検査で見逃されがちな課題のひとつが「記録性の欠如」です。人間が目で見て合否を判断しても、その瞬間の判断は検査員の頭の中にしか残りません。合格とした理由、不合格とした根拠、どんな微妙な迷いがあったのかは、時間が経つと再現できません。
これは品質保証の観点から大きな弱点です。万が一クレームや市場不具合が発生したとき、「そのときどのように検査されたのか」を追跡する手段がないからです。紙にチェックを残すことはできますが、それは単なる合否結果であって、実際にどんな外観だったのかまでは証拠になりません。
AIによる外観検査は、この点で大きな強みを持っています。検査時の画像や判定ログをすべて保存できるため、後から振り返って「なぜ不合格としたのか」「なぜ見逃されたのか」を客観的に検証できます。これはトレーサビリティの確保につながり、顧客への説明責任や内部改善にとって非常に有効です。
また、ログ化されたデータを解析すれば、不良の傾向や再発防止に直結する知見を得ることもできます。人の目による検査ではその場限りで消えてしまう情報が、AI検査では会社の資産として蓄積されるのです。
外観検査をAI化するメリットは、単に「見逃しを減らす」だけではありません。記録を残すことで、品質保証を次のレベルに引き上げることができるのです。