工場でヒューマノイドが使われにくい理由と、ダイカスト検査に必要な自由度
近年、ヒューマノイドロボット(humanoid robot)が話題になる場面が増えています。
踊ったり、握手したり、人と同じ動きを見せる姿は確かに魅力的で、技術者として心をくすぐられる“ロマン”があります。
人間そっくりの機体が現場で働く姿は、未来を象徴する存在でもあります。
しかし実務の視点で見ると、工場でヒューマノイド型が使われにくい理由は明確です。
まず、五指の高度なハンド、頭部のセンサー、二足歩行の脚などは、本来「人間向けの環境で人が作業するための構造」です。
ところが工場ラインは、人間向けに作られた家庭やオフィスとは違い、製造工程そのものをロボットに合わせて最適化できます。
そのため、ヒューマノイド特有の構造が活きる場面がほとんどありません。
移動に関しても、二足歩行はバランス制御(balance control)が非常に難しく、倒れないための計算コストや安全性の確保が大きな負担になります。
工場内では、AGVの様な専用搬送機で十分で、足の必要性はほぼありません。
さらに、五指ハンドはコスト・耐久性・メンテナンス性の面でも量産工程には向きません。
実務では、パラレルグリッパーや吸着のほうが堅牢で安定しています。
ダイカスト外観検査における「必要自由度」は意外と少ない
ここからはダイカストの外観検査の話です。
実は、「脱着(ロード/アンロード)」を専任ロボットや専用ハンドで処理できれば、検査に必要な自由度(degrees of freedom)はそれほど多くありません。
ワーク姿勢は安定しており、撮像ルートも事前に最適化できます。
つまり、「検査用カメラをどう動かすか」だけに絞れば、求められる運動範囲は限定的です。
そのため、360度の全周撮像が必要なダイカスト製品でも、IVI-360のような7軸構成で十分に対応できます。
固定カメラ方式では難しいアングルも、7軸カメラアームなら柔軟にカバーでき、過剰な自由度がなくても実務的には問題ありません。
まとめ
工場の自動化において重要なのは、
・耐久性
・精度
・安全性
・メンテナンス性
・コスト
・必要十分な自由度
といった要素です。
もちろん、ヒューマノイド型には夢があります。
頭、五指、二足が動く姿には、どうしても心が動いてしまいます。
しかし、産業用途ではそれらの構造が実務的な利点を生む場面は多くありません。
ダイカスト外観検査に関して言えば、脱着を除いた撮像プロセスは、IVI-360のような7軸アームで十分に成立します。
必要なのは「人型」ではなく「作業に最適化されたロボット」です。